『TAROと生きものたち』

1999年7月7日~10月4日

幼い日、私は 東京の青山6丁目で生れ、育った。
あの頃、日本中に舗装した道などというものはなかった。だから いつでも土の肌と 匂いと、そして目の前に舞いあがり、飛びかうさまざまの虫がいた。
私が一番親しみをもってとけあい、ふれあった相手は虫たちであった。春は蝶々、夏は蝉、トンボ、蛍、そしてやがてバッタ、こおろぎ、噛みきり‥‥‥いろんな虫をつかまえて来ては一緒に遊んだ。
目の前で動いている小さな虫、それが 自分か、自分が 虫か、混沌とした 充実感を覚えた。
未分化な生命の交歓が、今でも、ふと心の奥からふくれあがって、とび出してくるのである。(岡本太郎)