第25回 太郎賞受賞者特別展示

2023年6月21日(水)〜2022年7月9日(日)

岡本太郎現代芸術賞受賞作家 新作特別展示 吉元 れい花
『 – 繍しく刺るな [utsukushikualuna] – 吉元れい花 + バロン吉元 + エ☆ミリー吉元 』

 

 

 


 

 

 

『 – 繍しく刺るな [utsukushikualuna] – 吉元れい花 + バロン吉元 + エ☆ミリー吉元 』

 

2017年。病に倒れ一命は取り留めたものの、まだ感覚の戻らない丸太のような体を病室で横たえていた時のこと。うつらうつらしていると、岡本太郎さんの顔が突然脳裏に浮かび、「いのち」という言葉がシャワーのように、頭の中に降り注いではどんどんと溢れていきました。いのち、いのち、いのち…目を開けると、そこには太陽の塔がそびえ立っていました。

「あれはいったい何だったのだろう」

脈略なく押しよせた突然のヴィジョン、見つからない答え。

太郎さんのことをもっと知りたいと調べているうち、岡本太郎現代芸術賞の公募要項に行きつき、自身の制作の中で感じていた「糸」の持つ霊性に改めて気づかされ、同時に「縫う」という行為に込められてきた呪術的な歴史に、突如興味がわいてきました。

 

「生きるとは、死と直面して戦うことである。そこに真の生き甲斐がある。」

岡本太郎さんが遺された言葉は、今、実感を伴って私の体内を駆け巡ります。「死」に直面し戦うということは、いのちを冒して「生」を得るという矛盾。

あの日、私の前に降臨した太陽の塔は、生と死の相反する戦いの果てに触れた「大きないのち」そのものでした。それはまるで太陽のように、猛烈な不協和音をあげながら、今もなお私の中で無量の光を放射し続けています。

 

岡本太郎現代芸術賞において、私は刺繍の「裏側」を初めて公開しました。表からは見えない、縫いの迷いや葛藤が糸目の隙間から滲んでくるようで怖い。でもこの恥部を、私は大切にしたい。

生きとし生ける全ての命が、糸の“接=触れ合い”に息づく世界「繍国」。それはいのちの縫合、神話の先は岡本太郎記念館へと続きます。

 

この度の機会において、私の夫であるバロン吉元はマンガ執筆・絵画制作、娘のエ☆ミリー吉元は展示のディレクションを担当、また制作面においても密に連携。家族一丸となって取り組む、初めての展示となります。

 

吉元れい花 (岡本太郎現代芸術賞 2021年度岡本太郎賞)

 

プロフィール


吉元れい花(YOSHIMOTO Reika)

 

「表現の神髄は肉体に在る」という信念のもとに刺繍を制作。

素材や色艶、生産地など、糸そのものが持つ個性や、ステッチごとに表現される糸目の方向、密度、ふくらみや角度など、手刺繍ならではの特性。人間の手の中で、人間の手の速さでしか進まない、一針一針の前進。

それらが複雑に絡み合い浮かび上がる、コントラクション・アンド・リリース、魂の横溢を表現している。

 

桐朋学園芸術短期大学演劇科卒業。モダンダンサーのアキコ・カンダ氏に師事、Martha Grahamメソッドを学ぶ。レヴューの世界へ飛び込み、引退後は刺繍作品の制作を開始。

 

2022年、第25回岡本太郎現代芸術賞にて、史上初の刺繍・歴代最高齢で岡本太郎賞を受賞。

 

麗花刺繍 創始

楽繍会 主宰