『電撃』とその時代

2007年8月1日~11月4日

昨年11月、アトリエの整理をしていたぼくたちの前に『電撃』は突然その姿を現しました。なにも描かれていないキャンバスに巻かれ、棚の奥にひっそりと眠っていたのです。描かれたのは1947年。退色した絵ハガキがわずかに1枚残るだけの “幻の作品”でした。
1947年とは中国から復員した太郎が上野毛のアトリエで作品制作を再開した年。パリから戻り「絵画の石器時代は終わった」と言い放った太郎が、戦後の日本で既成の概念や権威との戦闘を開始した記念すべき年です。

『電撃』は同年制作の代表作『憂愁』『夜』とともに岡本芸術初期の最重要作品であり、日本で闘う覚悟を決めた太郎が戦後最初に描いた作品のひとつです。このたびようやく修復を終え、当時の姿そのままにご覧いただくことができるようになりました。

また併せて、『電撃』と同時期に発見された若い女性のデッサン画も初公開します。モデルもタイトルも制作年もわかりませんが、その姿は間違いなく若い頃の岡本敏子です。おそらく『電撃』を描いた上野毛時代のものでしょう。

デスマスクや軍隊時代などわずかな例外を除いて写実的な人物画を描くことをしなかった太郎にとってこの作品は特別な意味をもっているはずです。いままで知らなかった太郎が見つかるかもしれません。

岡本芸術の第二の出発点となった「『電撃』とその時代」をどうぞゆっくりとご覧ください