『TAROのエロス』
1999年4月7日~7月4日
太郎のエロティスムは、甘い、ムード的な愛ではない。のけぞる女、激しく迫る男。その男自身も引き裂かれている。緊張、痛苦なしに歓びはない。そう言っているようだ。
彫刻『愛』は誰でも見ればお解りになるとおり、横たわる二人の像。
抽象的だが、左側の男は、いかにもりりしく、豊か、男性的だ。人喰い鮫のように、宙に向って鋭く突き出たギザギザの凸起。だがそのボディは固く締まって優 しい。女のまあるいお尻。ちょっとくねった脚部は、清らかな情感をたたえて、寄り添う。愛らしく、エロティックで、官能的な男女の像である。
だがこれを作っている時の彼は、泥んこ遊びに熱中する腕白小僧のように、無邪気に、戦闘的だ。顔にも胸にも石膏をはねかし、ノミや金槌を振って、ひたむきに挑む。
「女は女。男は男」と言いながら。