『憂愁』

2004年10月6日~12月27日

処女作には、その人のすべてがあるという。岡本太郎、22才の作『空間』。ほとんど処女作といっていいこの作品には、青春のリリカルな憂愁が凝縮されている。
そして、戦後の第一作『憂愁』
心空しい時、ハタハタと鳴る
わが悲しみのあかし 旗
右から左のこめかみにかけて、
一旒──また一旒  ………
という詩のついた。
それから対極主義を唱え、果敢に社会に挑み続けた太郎。勇ましい、激しい戦士のイメージが強い。しかしその底には、いつまでもこのようなデリケートで憂いをたたえた、優しい無垢な資質が、基調音のように通底していた。ここにも。