『透明なリアル』

2005年4月6日~7月4日

岡本太郎にこんな写実的な絵があることはほとんど知られていない。戦後のアバンギャルドとしての激烈な闘いの中では、こういう面は出す余地もなかったし、それに対する郷愁もなかったようだ。 だが、酒の席などで戯れに人の顔を描いたりするとき、その筆の動きの自在さに目を見はる。鋭く、 デリケートな線。瞬時に対象の本質を掴みとって、 時に対象以上のその人が現れる、眼の適確さには驚かされた。
ここに展示したドローイングはそれに類するものが多い。展覧会のためや、人に見せる為に描いた ものではない。だが少しもだれていない。格調の高さ、気品、これは岡本太郎本来のもの。 眠る兵士にそそがれている眼の優しさ。透明感。 抽象的な激しい絵も凄いけれど、もっとこういう絵も見せて貰いたかった、とひそかに思う。