『透明な怒り』

2007年11月7日~2008年1月14日

普段は陽気でユーモラスな岡本太郎も、物事の本質的なゆがみやそれを 生み出す人間の卑しさに対しては徹底して怒り、その怒りをさまざまな表現を通して社会に投げ掛けました。 有名な『殺すな』の文字や『明日の神話』をはじめ、太郎の作品や文章には、怒りをモチーフにしたと思われるものが 数多く遺されています。

しかし、岡本太郎の「怒り」は、必ずしも目をむいた恐ろしい形相をしているわけではありません。 『明日の神話』に、哄笑しながら悲劇を乗り越える誇らかな人の姿が描かれているように、単なる憎悪や私怨のレベルを はるかに超える次元に立っているのです。

「透明な怒り」。太郎の怒りはそう表現されるべきものかもしれません。

怒りという感情がもつ人間本来の豊かな感受性のぶつかりあい、みずみずしさを失いつつあるかにみえる今日、 太郎の怒りは我々に多くの示唆を与えてくれることでしょう。ともに太郎の「透明な怒り」を感じたいと思います。

また、本展では第10回岡本太郎現代芸術賞「岡本敏子賞」を受賞した菱刈俊作氏が、太郎とのコラボレーションを テーマにした新作を発表します。どうぞご期待ください。